記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

理解はどこから始まるか:記憶痕跡とメタファーによる概念形成

 回は,「第1章 知識の獲得における言語の問題と概念化の実際」

2.教師の発話だけでは,児童が言語を理解できない場合の対応 についてです.

 れは,次のようにまとめています.

 「教師の発話だけでは,児童が言語を理解できない場合の概念形成については,少なくとも児童の記憶に,その言語に関する何らかの心象が残っていることが,概念形成のための条件となる」

 えば既出の「垂木」の理解には,軒天や庇(ひさし)を見上げた経験の心象が必要です.

 すから,「あなたの家の軒(のき)の部分は,どうなっていますか」などの追加発問で,できるだけ経験の心象を出させる工夫が必要となります.

引用 : https://www.densho-at.jp/blog/20201217-hisashi-nokiten.html

 然ながら,都会の児童は田舎の児童に比べて,この絵のような家屋の心象を保管している可能性が低いと考えられますので,教師側の更なる提示が必要となります.

 えば,次のような絵を板書するかジェスチャーで描いて,経験の記憶を想起させる工夫も必要となります.このような手続きを経て,なんとか児童が記憶想起できるようになればと願っています.

 かし,どのような手段を講じても,自身の記憶痕跡から何も見いだせない場合は,理解が出来ないと考えられます.教科書は,このようなことまで考慮して作成されていませんので,新しい言語に関しては注意が必要です.

 の時に役立つのは,概念メタファーです.メタファーとは,隠喩と訳されますが,児童が知っている物と形状や機能などが似通っているものを取り上げて考えさせる手法です.

 えば,軒(のき)を知らない児童に対しては,野球帽のつばをイメージさせ,「軒は家のつばです」などと追加の説明やジェスチャーを加えることによって,上の絵の軒について考えさせることが出来ます.

 

 れで野球帽のつばは,ある程度の硬さを有し折れ曲がらないで日差しを遮り,雨が目に入らないような機能を持っていることに関連して,軒(軒天)も日差しを遮り,雨風が外壁や窓に直接当たらないようにするなどの機能を話題にすれば,強度をどのようにして維持しているかという話題が提供できます.

 のタイミングで登場するのが垂木という仕組みです.児童は,軒(軒天)を支えるために何本もの垂木が屋根から伸びていることを理解すると思います.さらに,この時に,以前の投稿で利用した次の絵を示すと,より理解が深まると思います.

 

 の指導事例は,児童が軒天の心象すら持っていない場合対応として,ほぼ全員が持っているであろうと考えた野球帽の心象を使い,垂木の概念を学ばせることを目指しました.

 かし,先生方の中にはタブレットで垂木の画像を見せて,「これが垂木です」という指導に終始される方もいらっしゃると思います.それも指導の時間が取れないという現状においては仕方ないことかも知れません.

 回は,児童が知らない新たな言語の指導においては,その言語と関連した何らかの記憶の心象が必要であるというお話をさせて頂き,その対策として児童の誰でもが持っていると考えられるある概念をメタファーとして利用する方法について解説しました.

 後に,言語ではないのですが,あることを知っておられない先生方には理解できないことを示して終わりにしたいと思います.

「a=a+1」って何?