記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

研究の骨格:博論における本論構成と主要概念

 【お詫び】いつも丁寧にお読み頂き感謝申し上げます.さて先週頃から,このブログへのアクセスができない状況が続いていました.

 原因は,URLのドメインを「www.kiokusaisei.com」から「kiokusaisei.com」に変更したために,サーバーの設定に手こずっていたためです.現在は,ほぼ解消しています.

 回は序章の最後として「5.本論の構成」及び「6.概念の整理」について紹介します.

 博論の書き方としては,これまでの序章の記述で概要の紹介を終えるのですが,ここまでの書きぶりで博論の評価が決まってしまうと言われるほど,序章が重要であるとされています.

 ここまでの論述でこれからの大まかな内容について言及し,次の第1章から査読論文等を盛り込みながら詳細することになるのです.

【5.本論の構成】

 序章以降の構成については,次のような図を以て説明しています.

※注) 第2章の説明の中で,「~要因を探り,その修正~」の部分の「」は誤植です.

 序-7では,第1章から予定されている第5章までの内容構成は,このようになるという説明をしています.第1章から第4章までは,文末表現として「検討する」や「検証する」となっていますが,あくまでも論文叙述の時系列としては,今後の予定であるからです.実際は,データとして持っている実践の具体例や既に執筆している査読論文の結果が詳細されることになるのです.

 体的には,第1章は小学校教諭として日々の教育指導からの具体的な目撃例や実践例を挙げつつ,先達の理論との関連性について述べています.

 た,第2章からは査読論文の結果を含めた論述となっています.このことについては,これからの投稿で説明します.

 

【6.概念の整理】

 ここでは,序章で出てきた言語の概念整理を行っています.重要な言語としては,次のものがありました.

(1) 宣言的知識(declarative knowledge) 
 あるケース(場合)が何であるかを述べたものであり,命題で表象されている.


(2) 宣言的記憶(declarative memory) 
 言語によって記述できる,事実についての記憶を指す.


(3) 手続き的知識(procedural knowledge) 
 手続き的知識はどのようにするのかに関するものであり,宣言的知識よりも,活性化が速く,しかも環境に対してより強く反応する.


(4) 手続き的記憶(procedural memory) 
 手続き的記憶とは,自転車の乗り方や店での買い物の仕方などのように,言語による思考を介さずに再現される記憶を指す.


(5) 意味記憶(semantic memory) 
 一般的な知識として形成される記憶.


(6) エピソード記憶(episodic memory) 
 個人的経験に基づく記憶であり,時間的・空間的文脈の中に位置づけられる記憶.個人的な関わりのなかで形成される. 


(7) 感覚記憶(sensory memory) 
 感覚器から入力された意識にのぼらない情報を,1 秒程度のごく僅かな時間に保持する記憶.


(8) 短期記憶(short-term memory) 
 感覚記憶に入力された情報のなかで注意が向けられた情報を,数 10 秒程度の短い時間保持する記憶.


(9) 長期記憶(long-term memory) 
 短期記憶で注意が向けられた情報のなかで,意識的な思考過程を経て長期にわたり保持されている記憶.


(10) ワーキングメモリ(working memory) 
 短期貯蔵庫(短期記憶)は,情報を単に保持し,長期貯蔵庫に転送するだけという機能以外に,入力された情報に対する積極的な働きかけを行う機能を有するという問題から,導入された概念.作業記憶,作動記憶とも言う.


(11) チャンク(chunk) 
 人間は,関連する情報を一つのまとまりとして記憶することができるが,その「情報のまとまり」を指す.また,その基本単位のこと.


(12) 音韻ループ(phonological loop) 
 音声情報を忘れないように,繰り返し唱えることで,情報をリフレッシュすること.


(13) リハーサル(rehearsal) 
 情報を反復すること.


(14) プロダクション・システム(production system) 
 特定の条件下において,特定の行動を行う「条件―行為規則」によって構成される人間の認知モデル.


(15) 意味ネットワーク・モデル(semantic network model) 
 人間の知識モデルの一つで,個々の概念が一つのノード(node)で表され,意味的に関連のある概念どうしがリンクで結びつけられ,意味的関連性に基づくノード・リンク構造を成しているもの.


(16) ノード・リンク構造
 ノードとは,結節点の意味であり,リンク(連結)によりつながりを持った構造.知識モデルにおいては,ノードには概念が含まれている.


(17) スキーマ(schema) 
 心象や概念を包括する心的な枠組のこと.知識の集合体.


(18) 自己中心的ことば
 言葉で状況を意味付け,やり方を決め,すぐ次の行動を計画する試みるために,思考の中で自身に向けられ発せられた呟き. 

 

 今回はここまでです.次回からは,第1章に入っていきます.丁寧にお読み頂きありがとうございました.