記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

ちょっとひと休み(2024.08.02)

 8月になりました.これからさらに暑くなりそうで,熱中症対策を真剣に考えないと,本当に体調を崩しそうです.

 思い出すと,私が教員になりたての頃は,学校にエアコンは一つもありませんでした.もちろん,教室には扇風機もなかったですね.そのような環境でも,普通に授業はできていましたし,あまり困った記憶はありません.学校にエアコンが導入され始めたのは,1990年代の中ごろだったように記憶しています.もちろん校長室からでした.教室にエアコンが導入され始めたのは,ここ10年と言ったところでしょうか.

 さて今回は,先月末に発表された学習状況調査の結果に関する話題についてです.都道府県の結果については,文科省から公表がなされていますので,ご覧になった方も多いと思います.ちなみに国立教育政策研究所の公表資料は,詳細に分析されていますので分かりにくいかも知れません.そこで,東洋経済オンラインがそれらをまとめたデータを記事にしていますので,その中から「小学6年生の国語・算数合計の正答率」をご覧ください.

2024年度 全国学習状況調査 国語と算数合計の正答率(%) (東洋経済オンライン様より)

 今回の視点は,データそのものではなく,各県の教育委員会の対応姿勢についてです.当然ながら上位や中位の都府県は,特に早急な対応を迫られている訳ではないのでスルーして,31位の長崎県から47位の沖縄県の反応を見ていきたいと思います.

 まずもってこの学習状況調査に関しては,某県の過去問問題もありましたが,このような順位が分かるデータを国立教育政策研究所が公表していることにも問題があるという意見があります.それこそ,こっそりと県に通知すれば,その県は他県との比較をせずに済み,平均値との格差をしっかりと改善すべく次の対策を考えればいいのですが,こうもメディアに順位を晒されると下位順位の県はテンションが落ちそうです.

 

 さて,各県の新聞社がこの結果をどのように報道したかを調査してみました.調査の対象は,31位の長崎県から沖縄県までです.このような報道の情報源は主に県の教育長や教育委員会で,取材元は地方新聞社になっています.取材した内容の内,「成績が思うように伸びなかった原因を,各県の教育委員会等はどのように考えているか」を記述します.

 

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 31位 長崎県「県教委は,塾などを含めた授業以外の学習時間は小中ともに全国平均より少なく,特に中学校で8・3ポイント低いことが結果に影響した要因の一つとみている.県教委は「学校や家庭,地域が連携し,授業外の学習を支えることが重要.子どもたちが主体的に学ぶ力を育めるようにしていきたい」としている.

 

 31位 熊本県「県義務教育課は,(省略),児童生徒が自ら主体的に考え,学ぶための授業の改善が必要.結果を精査し,各市町村教委や学校と具体的な対策を考えたい」と説明した.

 

 31位 愛知県「東海3県の教育委員会は今回の調査を踏まえ、授業の改善などに向けた取り組みを行っていく」としています。

 

 35位 群馬県「県教委は今回の結果をうけて分析部会などを設置し,改善につなげる」という.

 

 35位 岩手県「県教委によると,本県の平均正答率は,小6の国語が69%で全国を1ポイント上回った.算数は59%で4ポイント下回り,「数と計算」「図形」「変化と関係」「データの活用」といった学習指導要領の全4領域で全国に届かなかった.」

 

 35位 大阪府大阪府教育庁は,(省力),結果を公表しました.大阪府教育庁小中学校課は,(省略),ほぼ全国水準と捉えている.(省略),文章や情報を読み取って論理的に考え,記述することに、引き続き課題が見られるとして,今後、改善に向けた取り組みを進めたい」としています.

 

 39位 佐賀県県教委学校教育課は「全科目で全国平均を下回った課題などは今後分析したい」とする一方「家庭学習を『全くしない』割合も増えていて,学習時間の確保が十分でない課題があった」とし,教員向けの家庭学習指導の手引きの活用を促していく考えを示した.

 

 40位 北海道「小学校の算数では全国平均との差が広がっており、学校全体での検証改善サイクルの更なる充実に向けた取組が必要」と考えています。

 

 40位 滋賀県福永忠克教育長と報道各社の主な一問一答.文章を読んでその中の人物像や物語の全体像を想像し,自分の考えで文章にまとめるところにも課題がある.自分の考えをまとめて表現する,書くことを重点的に進めていきたいと考えている.」

 

 40位 島根県教育委員会は「課題の改善は道半ば」としている.無解答率は小学校で大きく改善した.無解答率が全国平均を上回った問題の割合は,前年度の63%から17%に激減.中学校は前年度が63%,今年度が58%だった.」

 

 43位 岐阜県県教委義務教育課は「専門用語やデータなどを結びつけながら論理的に自分の言葉で話したり,説明したりすることに課題があった授業の中で児童に“語らせているか”という部分に弱さがあり,自分の言葉で表現させる機会が少ないのかもしれない」と分析した.

 

 44位 宮城県「県教育庁義務教育課 本田史郎課長「全国に平均が届ていない,これが数年続いていることにつきましては,本当に重く受け止めています」県は課題を分析し,全国平均を目指したいとしています.」

 

 44位 福島県大沼博文県教育長は結果を受けて「創意工夫を凝らして指導しているが,求められる資質・能力を十分に育成できていない」とのコメントを発表.「今回の結果を重く受け止め,県全体として共通実践を図れるよう対策を講じる」とした.8月5日に各市町村教委を交えた臨時の対策会議を開き,対応策を決める.」

 

 46位 山形県石原敏行課長は「コミュニケーションを重視した授業は増えているが,正確に書く,正確に話すという力がまだ足りない」と指摘した.石原課長は「全体として課題の多い結果」と受け止め,「しっかりと分析をして課題を明らかにし,具体的で実効性のある取り組みにつなげる必要がある」と話した.」

 

 47位 沖縄県半嶺教育長は「小学校の国語では授業改善の成果が表れている.研修会や学校訪問などを行い,各学校の授業改善の取り組みを支援したい」とコメントしています.」

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 この中で,赤文字は主に学習状況の結果に言及した主体とその内容を表しています.また,緑文字は,授業に言及した内容を表しています.ここに挙げた多くの県で,授業改善に言及しています.

 ところが青文字は,家庭学習に言及した内容になっています.佐賀県は,学力低下の原因を家庭学習にあるとしていますが,長崎県も家庭学習の文字は無いのですが,同様のニュアンスを感じます.

 佐賀県の場合は,ここ数年,学力低下の原因を家庭学習の時間の少なさとしていますが,元教師としては納得いきません.

 なんで,学校で教えた授業の内容の出来不出来を,家庭学習のせいにしなければならないのでしょうか.全く潔くありません.少なくとも,学習状況調査の結果の原因を聞かれたときは,第一義的には授業の内容に言及する回答でなくてはならないと思いますが,皆さんは如何でしょうか.

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