記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

理解はどこから始まるか:記憶痕跡とメタファーによる概念形成

今回は,「第1章 知識の獲得における言語の問題と概念化の実際」の 2.教師の発話だけでは,児童が言語を理解できない場合の対応 についてです. これは,次のようにまとめています. 「教師の発話だけでは,児童が言語を理解できない場合の概念形成について…

音は同じ、意味は違う—教育現場での言語のすれ違い       

今年も早いもので6月になりました.九州北部も梅雨に突入です. 今回は, 第1章 知識の獲得における言語の問題と概念化の実際の1-2 児童が,教師の発話する言語の概念を持ち合わせているが理解できない場合について紹介します. 皆さんは,先生が発話される…

見えない言葉と概念の壁

今回から本題に入っていきます. 第1章は「知識の獲得における言語の問題と概念化の実際」というタイトルです. この第1章は次の5つの章で構成されています. 1.児童が言語を理解できない具体的な場面 2.教師の発話だけでは,児童が言語を理解できない場合の…

よく読まれているページをまとめました

5月の中旬になりました.4月下旬からのドメインの変更に関して,www.kiokusaisei.comへのアクセスが出来なくなり,ご迷惑をおかけしています. 当ブログのURLは,サブドメインの www.kiokusaisei.com から,ネイキッドドメイン kiokusaisei.com への変更を行…

研究の骨格:博論における本論構成と主要概念

【お詫び】いつも丁寧にお読み頂き感謝申し上げます.さて先週頃から,このブログへのアクセスができない状況が続いていました. 原因は,URLのドメインを「www.kiokusaisei.com」から「kiokusaisei.com」に変更したために,サーバーの設定に手こずっていた…

「見える化」された児童の思考:記憶再生マップの分析による学習評価の可能性

いつも丁寧にお読み頂き,ありがとうございます.このブログでは,学校現場の先生方に,認知科学的視点を身に付けて頂きたく記事を書かせて頂いています. 一般的に教育学部では,認知科学に関する授業が行われていない場合が多いと感じています.従って授業…

1時間の追加で学力UP?脳科学に基づく学習法検証その②

前回は意味ネットワーク・モデルについてお話ししました.今回はその発展型としての記憶再生マップについてお話ししますが,その前にそもそも論として,なぜ意味ネットワーク・モデルの作成を学習行動として発想したのかについて説明します. 私はこれまで高…

1時間の追加で学力UP?脳科学に基づく学習法検証その①

3月になりました. このブログでは,学校現場の先生方が授業を計画されるときに,どのような学習行動を組み込むと児童・生徒が学習内容を理解できるようになるかについて,主に認知科学的な視点で記述しています. 現在は,放送大学学術リポジトリで2023.12…

教師の発話が児童の誤概念を形成するメカニズムとその検証方法

いつもご覧頂き,ありがとうございます. さてこの回は,私の博論に戻り,仮説検証の方法についてご説明いたします. 「仮説①」「教師の発話に起因する児童の誤概念は,教師の別の発話やジェスチャーにより修正される」 この仮説を設定した理由としては,学…

海馬とスキーマ:意味ある経験が学習を促す

前回の海馬の話は,納得いただけましたでしょうか.今回は予定を変更して,もう少し海馬について考えてみます. 前回の内容を補足しますが,海馬の記事を紹介している某サイトに,「海馬は地図が好き」みたいなことが書かれていたのですが,おそらく場所細胞…

海馬と学習:神経科学からの教育への示唆

今回は,海馬の学術的研究成果から考えられる学習法と本研究の仮説のまとめについて説明します. 小中高における現在の学習にとって重要なことは,文科省によって制定されている学習指導要領に則った授業内容を,教諭である先生方が独自の解釈を踏まえて構成…

意味ネットワークモデルによる概念再構成:児童の能動的な概念形成を促す

今回は,「仮説②」について説明します.本年もよろしくお願いいたします. 仮説②「児童の知識モデルとして,意味ネットワーク・モデルの手法により,児童が自己の概念を概観できる形で表象し,それらの関係性を考える機会や他の児童に説明する機会を設けるこ…

授業における言語コミュニケーションと児童の概念形成:誤概念生成・修正メカニズムの解明に向けて

お正月の能登半島地震で始まった令和6年も,もうすぐ終わりです. このブログは,ほぼ10日おきに更新作業を行ってきました.今年は今回で38回目となります.いつもお読み頂き,感謝申し上げます. さて今回の話題は,博論によればp22~28に書かれている「4. …

記憶の糸を紡いで、知識の地図を描く! 知識モデルを活用した学習法~物語を学びに変える! エピソード記憶が概念形成に果たす役割~

いつもお読みいただきありがとうございます.前回は,批判的思考を話題とした内容でしたが,多くの皆様にお読み頂き感謝申し上げます.兵庫県知事選挙についても今後,まだまだ色々とありそうですが,このブログの本来の目的に戻って,皆様にお伝えいたした…

日本の教育の光と影:批判的思考の欠如が招いた知事選の結果 ~なぜ日本の教育は「疑うこと」を教えないのか?~

いつもお読みいただきありがとうございます. 13日に前回の投稿をした後,兵庫県知事選がありましたね.私は政治の専門家ではありませんので,あまり言いたくはないのですが,一部の人たちはSNSの活用で再選につながったようなことを言っているようですが,…

知識の再構成と内言:記憶想起を通じた深層学習の実現に向けて

前回は,「思考力」という言語のイメージを紹介しましたところ,多くのアクセスを頂き感謝いたしております. 佐賀大学の角先生にもご説明したところ,「国語や算数など,具体的な事例が欲しい」ということでしたので,最後に少しだけ考えてみたいと思います…

確かな学力とは何か?~文科省の定義と脳科学からのアプローチ~

いつもお読み頂きありがとうございます. 今回は,「確かな学力」ついてもう少し解説します. 少々込み入った話になりますが,学力の本質を理解するためにも,宜しくお願い致します. 私は博論で「生きる力」に直結する「確かな学力」とは,「獲得し,そこに…

ちょっとひと休み・・・・

みなさんは,児童・生徒が「ある概念」を持っているかどうか知りたいときは,どのようになさっていますか. 児童・生徒が保持しているスキーマの中の「ある概念」の有無を予め知っておくと,授業がとてもしやすくなります.これまでもスキーマの重要性は,こ…

「確かな学力」の深層を探る:知識の統合と思考力の育成

いつもお読みいただきありがとうございます. このブログでは,現在放送大学学術リポジトリ 放送大学機関リポジトリ の「最もアクセスされたアイテム」で10か月連続1位となっている私の博論をもとに,教育現場で役に立つ記事をお届けしています. なお,博論…

教師と児童の言語コミュニケーションの課題:生成AIが映し出す授業の現実

私は,10月5日(土)は,長大で久しぶりの学会発表でした. 今回の発表は,佐賀大学の角和博名誉教授が,昨年度に中学校で「技術科」の授業をされたときに,生徒に描かせたウェビングマップの解析を任されましたので,その報告を行いました. このことに関して…

知識のブラックボックスを覗く:授業と児童の脳内モデル

「暑さ寒さも彼岸まで」・・・・最近,朝晩,少しずつ気温が下がって,ひんやりとする空気を感じるようになりました. 朝の5時30分.早朝ジムに通うために車に乗りましたが,温度計の値は17℃.さすがに久々の寒さを感じました. さて,今回は,私が博論に挙…

児童・生徒の「なるほど」を育むために:概念形成と自己確認の重要性

暑い~,地球が逆方向に公転し始めたかのような夏再来・・・・・・. 学校も暑くて,大変でしょうね.私が理科専科をしていた2年前は,特別教室にはエアコンが設置してなかったので暑くて授業がやりにくかったことを思い出します. そう言えば,私の大学院で…

言語の壁が阻む学び:概念形成における教師と児童のズレ

今回からは,私の博論を紐解いていきながら,最終的には記憶の再生(想起)が学力向上に重要であることを示していきたいと思います. ちなみに,博士論文では,その性格上,世界で誰も書いたことが無い唯一無二の内容を記述しています.つまり,これまで,誰も…

なぜ佐賀県の学力低下の原因が家庭学習に?~記憶の視点から考える~

夏休みも終わり,2学期や1学期(前期)後半が始まった学校も多いと思います. もともとこんな話題になったのは,繰り返しになりますが,今春の学習状況調査で低迷した結果の原因を佐賀県教育委員会が,「家庭学習の時間が短くなった」ことを理由としていること…

記憶想起について⓪の2

前回の内容は,キャンディーズファイナルカーニバルのチケットを紹介しましたので,結構アクセスが多くて感謝しております.55,000枚のチケットの何%が現存しているか気になるところです. 次に,1975年8月26日(木)午後6時30分 ~です.・・・・が,訂正です…

記憶想起について⓪の1

お盆です.お盆になると,地方では車の数が増えてきます.ナンバーも,見慣れない地名がちらほらと・・・. さて,前回の日付のことですが,「1978年4月4日(火) 午後5時17分 ~ 午後9時17分」は,とても有名な出来事で,多くの人が記憶しているイベントがこ…

記憶想起について⓪

家を出るとむっとする暑さを感じますが,それでも立秋を過ぎました.暑さはまだまだ,これからもっと酷くなるような,そんな空気感です. さて,前回(ちょっとひと休み)では,平均値を下回った学習状況調査の結果に対するメディア取材に,家庭学習の時間が減…

ちょっとひと休み(2024.08.02)

8月になりました.これからさらに暑くなりそうで,熱中症対策を真剣に考えないと,本当に体調を崩しそうです. 思い出すと,私が教員になりたての頃は,学校にエアコンは一つもありませんでした.もちろん,教室には扇風機もなかったですね.そのような環境…

授業における知識の形成過程 その⑮

多くの学校では夏休みに入りました.先生方,1学期または,1学期前半のご授業お疲れさまでした.冬休みが長い地域では,もうすぐ夏休みですかね. さて今回は,記憶再生マップの初期提示の最終回となります.最後に残っていた提示が,「ふりこの動き-1往復の…

授業における知識の形成過程 その⑭

7月に入り10日が過ぎました.梅雨も終盤になりつつあります.大雨にならないように願っています. さて今回は,記憶再生マップで児童がふりこの説明を描いた部分について,どのようにしてこの部分が描かれたかを考えてみましょう. 記憶再生マップを描く場合…