記憶の再生について考えるブログ

児童がどのようにして学習内容を理解するかを実践経験をもとに紹介しています.

よく読まれているページをまとめました

 5月の中旬になりました.4月下旬からのドメインの変更に関して,www.kiokusaisei.comへのアクセスが出来なくなり,ご迷惑をおかけしています.

 当ブログのURLは,サブドメインの www.kiokusaisei.com から,ネイキッドドメイン kiokusaisei.com への変更を行いました.

 

記憶の再生について考えるブログ⇒当ブログの最新記事です.

 研究の骨格:博論における本論構成と主要概念】(2025.4.30)

 

 

②『博士論文を読んでみよう

  ⇒当ブログの最新話題は, 博士論文の解説を学校の先生や一般の方々に向けて行っています.この博士論文がどのようなものかを簡単に言えば,「人はどうすれば正しい事柄を記憶することができるかを,実際に小学校の授業で確かめた」ものです.

  ⇒博士論文なんて難しいと思われる方は,一度読んでみて下さい.学校教育に興味のある方もどうぞ.

  ⇒すでに序章についての説明は終了しています.

 

③『授業における知識の形成過程

  知識の形成過程の記事①~⑮】(2025.5.1更新) 

  ⇒授業中の児童や生徒の頭の中で何が行われているかの説明をしています.

解説図の例

 

 

➃『スキーマ(Schema)の解説

  スキーマの解説記事①~⑤b】(2025.5.1更新)

    ⇒スキーマについて解説しています.

    ⇒教員の方でスキーマを知らない先生は,ご指導のために是非お読みください.

説明に使った図の例

 

 

⑤『記憶再生マップの効果

記憶再生マップの効果①~⑩,生成AIの要約付】(2025.5.1更新

 ⇒記憶再生マップを使った授業を通して分かった効果について説明しています.

 

 

 児童はどのように理解するか

 ⇒2016年にこのブログのことをざっくりと紹介したページです.

研究の骨格:博論における本論構成と主要概念

 【お詫び】いつも丁寧にお読み頂き感謝申し上げます.さて先週頃から,このブログへのアクセスができない状況が続いていました.

 原因は,URLのドメインを「www.kiokusaisei.com」から「kiokusaisei.com」に変更したために,サーバーの設定に手こずっていたためです.現在は,ほぼ解消しています.

 回は序章の最後として「5.本論の構成」及び「6.概念の整理」について紹介します.

 博論の書き方としては,これまでの序章の記述で概要の紹介を終えるのですが,ここまでの書きぶりで博論の評価が決まってしまうと言われるほど,序章が重要であるとされています.

 ここまでの論述でこれからの大まかな内容について言及し,次の第1章から査読論文等を盛り込みながら詳細することになるのです.

【5.本論の構成】

 序章以降の構成については,次のような図を以て説明しています.

※注) 第2章の説明の中で,「~要因を探り,その修正~」の部分の「」は誤植です.

 序-7では,第1章から予定されている第5章までの内容構成は,このようになるという説明をしています.第1章から第4章までは,文末表現として「検討する」や「検証する」となっていますが,あくまでも論文叙述の時系列としては,今後の予定であるからです.実際は,データとして持っている実践の具体例や既に執筆している査読論文の結果が詳細されることになるのです.

 体的には,第1章は小学校教諭として日々の教育指導からの具体的な目撃例や実践例を挙げつつ,先達の理論との関連性について述べています.

 た,第2章からは査読論文の結果を含めた論述となっています.このことについては,これからの投稿で説明します.

 

【6.概念の整理】

 ここでは,序章で出てきた言語の概念整理を行っています.重要な言語としては,次のものがありました.

(1) 宣言的知識(declarative knowledge) 
 あるケース(場合)が何であるかを述べたものであり,命題で表象されている.


(2) 宣言的記憶(declarative memory) 
 言語によって記述できる,事実についての記憶を指す.


(3) 手続き的知識(procedural knowledge) 
 手続き的知識はどのようにするのかに関するものであり,宣言的知識よりも,活性化が速く,しかも環境に対してより強く反応する.


(4) 手続き的記憶(procedural memory) 
 手続き的記憶とは,自転車の乗り方や店での買い物の仕方などのように,言語による思考を介さずに再現される記憶を指す.


(5) 意味記憶(semantic memory) 
 一般的な知識として形成される記憶.


(6) エピソード記憶(episodic memory) 
 個人的経験に基づく記憶であり,時間的・空間的文脈の中に位置づけられる記憶.個人的な関わりのなかで形成される. 


(7) 感覚記憶(sensory memory) 
 感覚器から入力された意識にのぼらない情報を,1 秒程度のごく僅かな時間に保持する記憶.


(8) 短期記憶(short-term memory) 
 感覚記憶に入力された情報のなかで注意が向けられた情報を,数 10 秒程度の短い時間保持する記憶.


(9) 長期記憶(long-term memory) 
 短期記憶で注意が向けられた情報のなかで,意識的な思考過程を経て長期にわたり保持されている記憶.


(10) ワーキングメモリ(working memory) 
 短期貯蔵庫(短期記憶)は,情報を単に保持し,長期貯蔵庫に転送するだけという機能以外に,入力された情報に対する積極的な働きかけを行う機能を有するという問題から,導入された概念.作業記憶,作動記憶とも言う.


(11) チャンク(chunk) 
 人間は,関連する情報を一つのまとまりとして記憶することができるが,その「情報のまとまり」を指す.また,その基本単位のこと.


(12) 音韻ループ(phonological loop) 
 音声情報を忘れないように,繰り返し唱えることで,情報をリフレッシュすること.


(13) リハーサル(rehearsal) 
 情報を反復すること.


(14) プロダクション・システム(production system) 
 特定の条件下において,特定の行動を行う「条件―行為規則」によって構成される人間の認知モデル.


(15) 意味ネットワーク・モデル(semantic network model) 
 人間の知識モデルの一つで,個々の概念が一つのノード(node)で表され,意味的に関連のある概念どうしがリンクで結びつけられ,意味的関連性に基づくノード・リンク構造を成しているもの.


(16) ノード・リンク構造
 ノードとは,結節点の意味であり,リンク(連結)によりつながりを持った構造.知識モデルにおいては,ノードには概念が含まれている.


(17) スキーマ(schema) 
 心象や概念を包括する心的な枠組のこと.知識の集合体.


(18) 自己中心的ことば
 言葉で状況を意味付け,やり方を決め,すぐ次の行動を計画する試みるために,思考の中で自身に向けられ発せられた呟き. 

 

 今回はここまでです.次回からは,第1章に入っていきます.丁寧にお読み頂きありがとうございました.

「見える化」された児童の思考:記憶再生マップの分析による学習評価の可能性

 いつも丁寧にお読み頂き,ありがとうございます.このブログでは,学校現場の先生方に,認知科学的視点を身に付けて頂きたく記事を書かせて頂いています.

 一般的に教育学部では,認知科学に関する授業が行われていない場合が多いと感じています.従って授業の設計や実践,あるいは事後の分析等で先生方が,「入力⇒処理⇒出力」のような情報処理的過程をイメージして議論することは少ないのではないでしょうか.また自分の過去の教職経験からも,提示されたコンテンツを児童・生徒がどのように知覚し,認知するかなどもあまり議論の対象にはなっていなかったように感じています.ましてやどのように記憶されるかなどの議論は皆無でした.

 この本は,修士課程の大学院時代にお世話になった一冊です.副題は「認知心理学と教育実践が手を結ぶとき」となっていますので,なぜ認知的な視点を持って授業を行った方が良いかが分かる本です.

 さて今回は「記憶再生マップ」の実践を通して,児童がノードに記述した言語や絵図等をどのように分析するかについて紹介します.私は博論を執筆する以前から,現場では記憶再生マップの実践を多く手掛けてきました.その中で,実際に児童の描いた記憶再生マップを見ながら児童に問いかけたりすることによって,どのような記述が深い理解に至るのかや,どのような記述の行為が児童の気づきの結果であるかなどはある程度知っていたつもりです.

 ただ,論文にするためには,児童の記述した記憶再生マップを分析しなければなりません.そのためには,児童が描いた(書いた)ノードの言語を中心ノードから順に取り出していく必要があります.ここでは,2番の児童が描いた次のマップで説明します.

 これを見ると,中心ノードから4つの第1ノードの方向へ言語や絵図がつながっているのが分かります.中心ノード(もののとけ方)と4つの第1ノード(とける重さとりだし方とける量)が私の提示した内容でした.博論では,この4方向のなかで,とけるから派生した言語については,指導内容ではありませんので調査から除外しました.

 た,いくつかのノードに描かれた絵図については,絵(ろ過の仕組み)絵(漏斗にホウ酸が溜まる仕組み)などのように私(教師)が考えた絵図の説明を用いました.博論では,このようにして取り出した言語のつながりを,次のようなExcelのセルに転記し順に読み解くことにしました.例えば,赤の矢印「とける量」から派生した2番の児童が書いたノードのつながりです.これを読み解くことで記憶再生マップを描くことの効果を確かめようとしたのです.実際の結果は,序章の後に書いています.

 これと似たような取り組みを,2013年に京都大学の松下佳代氏らが「深い学習評価ツールとしてのコンセプトマップの有効性」という研究論文にまとめています.コンセプトマップですので記憶再生マップとは異なりますが,私が記憶再生マップについて調査した結果と似たような結果になっています.

 このことについては後日詳細しますが,簡単に言えば「書き込んだノード数(=リンク数)が多い児童は,よく理解している」ということですので,授業で記憶再生マップを描かせながら,ノード数を俯瞰するだけで,概ねその児童は学習内容を理解していることが分かるという事になります.

 論では「仮説②の検証方法」の最後に,一般的に行われている分かったことを文章で記述させることと,記憶再生マップを描かせた後に分かったことを文章で記述させて,その違いを明らかにする旨を書いています.

 かなり込み入ってきたので,不明な点はコメントして頂くと助かります.

 今回もお読み頂き感謝申し上げます.

1時間の追加で学力UP?脳科学に基づく学習法検証その②

 前回は意味ネットワーク・モデルについてお話ししました.今回はその発展型としての記憶再生マップについてお話ししますが,その前にそもそも論として,なぜ意味ネットワーク・モデルの作成を学習行動として発想したのかについて説明します.

 はこれまで高校の講師,小中学校の教諭として教壇に立っていましたが,児童・生徒が授業によって獲得する知識は,全て言語によって表現されることに何ら疑問も感じていませんでした.それは,教科書が言語によって知識を表していたので,知識は言語で表現されるものと思っていたからです.

 確かに書物や俳句や和歌などは言語によって表現され,それを書いた人の知恵や想いを人々に伝えています.さらに試験も言語によって解答がつくられ,言語を正しく記述することが正しい知識を獲得したことの証拠になるという考えがあったからだろうと思います.

 かしよくよく考えてみると,ある事柄を理解することと,そのことを言語化するは別物ではないだろうかという疑問が生まれたのです.なぜならば,理解するときには必ず内部表象が言語を伴った思考や伴わない思考に関わってきますし,内なる納得が起こります.しかしその段階では,心情的には理解したと感じていますが言語化はなされていない場合が多いです.

 してその後,それらの出来事を言語化することになりますが,時間が経過するとエピソード記憶などが曖昧になり言語化が難しくなったり,そもそも言語を使って一連の学習行動を含む経緯を表現することが苦手な児童(生徒)もいたりして,どのような学習行動を経て学習のまとめに至ったかを表現できる児童(生徒)は,私が実践した4年生理科の授業では1クラス中1~2名程度でした.このように言語で表現できない最も大きな原因は,前回の記事で紹介した理化学研究所が解明した「記憶は時間の経過とともに無意識のうちに変わっていく」ことと非常に関係深いと言えます.従って,言語化による学習のまとめの前には,記憶想起の手順が不可欠という事になります.

 の「理解」という言語ですが,私は博論で学習内容を理解するとは,「児童(生徒)が学習内容やその過程を正しく記憶に残すこと」と定義しました.つまり単に,授業の最後に行われる学習のまとめで先生がまとめられた言葉のみを記憶することは,学習内容を理解したとは言いにくいのではないでしょうか.ですから,このような意味からも様々な学習行動を正確に記憶想起することが重要になってくるのです.

 えば,幼児の前に2個のおもちゃがあったとして,その個数を理解させたいとき,「おもちゃは全部でいくつあるかな」などの問いかけによって,幼児はおもちゃを実際に触りながら数えるという行動を取ることがあります.そして「2(に)」と答えると,親が「すごいねぇ」などの称賛を与えることで,おもちゃが2個ある姿は,「に」と発話をするとよいことが分かってきます.しかしこれは,本当に理解した訳ではありません.なぜならば,1よりも2が大きいまたは多いという集合数の概念や,集合数を知るための順序数の概念の理解が出来ていないと考えられるからです.

 順序数や集合数については,ここを参考にして下さい.

※おもちゃの車の台数を数える幼児(2歳)

 また小学校算数での「1+1=2」の計算では,「2」と答えを出す前に様々な手続きを学習行動として行っています.例えば先程の順序数や集合数の概念や「+」の概念の指導など先生方が工夫を凝らして授業をされています.それら全ての手続きを経て「2」という結果を答えと認識することになります.

 しかし,「1+1」を「2」と答えたからと言っても,本当に理解しているのかは,「に」と言語化して発話したことでは分かりません.「なぜあなたは,答えを2と思ったのですか」と聞かれたときに,授業で経験したことなどを含め,1年生なりに学習の経験が含まれた筋道の通った(論理的な)説明ができて初めて理解したと言えます.

 ただ実際は,指導時間の制限もあってそれらをペーパー試験で代用しているだけです.そして,これが現在の日本の学校教育の大きな欠点と考えられますなぜならば,ある単元の学習を終えた時点で全ての児童(生徒)自らが,その単元内容を言語によって説明できるようには指導されていないのではないかと思えるからです(指導されている先生方,ごめんなさい🙇).

 の多くの経験でも,様々な教科でほとんどの児童・生徒が淀みなく学習内容について発話によって説明したことはありませんでした.たとえ学習の最後に「説明して下さい」と指示したとしても,過去の学習内容を記憶想起できなければ,結論に至る様々な学習行動が,どのような連関を持っているかについて認知できていないので説明することは不可能です.ただ単に,結論は〇〇であるという事を知ったというだけになります.

 えれば推理小説の結末だけを読んで犯人が誰かという事は知ったけれども,なぜその人が犯人と分かったかについて知らないことと同じだと言えます.これでは,その推理小説について,他の人に紹介することは出来ませんし読書の楽しみもありません. 

 てここからは学習のまとめで利用する「記憶再生マップ」について説明します.まず記憶再生マップに限らず,これらのマップを使用する意味は,児童(生徒)の記憶想起が可能になるからです.もともとの意味ネットワーク・モデルは,前回お示しした通りで,ある事柄などの概念や思考が単一の概念や思考で成立するのではなく,互いに連関して広がっているような構造を持つネットワークとして表されていました.また各ノード(それぞれのリンクを繋いでいる部分:結節点)は,AnimalやFishのように言語で記述されています.さらに矢印で示されたリンクには,「lives in」のようにものの状態を表す言語が添えられていました.そのことにより「魚は水の中で生きている」という概念を表現していたのです.

 かし,これでは児童が何も書くことが出来ないのは明らかです.また教育現場での利用となれば,ノードの内容が学習内容となりますので単に物の名前を記述することと全く異なる訳です.

 そこで児童に描かせる知識モデルは,ノードには児童が学習したことによって理解した事柄の概念を主として絵で描かせ,リンクによって関係する事柄を結ばせることにしました.このようにして描かれたノード・リンク構造は,意味ネットワーク・モデルの性格を持ってはいますが,言わば児童の内部表象に合うモデルとして提案すべきと考えました.

 これまでの長い教職経験から児童に考えを書かせる場合,閉ざされた領域に書くように指示すると比較的スムーズに考えが書けることが分かっています.このような児童の特性に合わせてノードは,閉じた領域を提示します.この知識モデルには中心(中心ノード)があり,出発点となっています.全てのノード・リンク構造は,この中心ノードから始まることになります.従いまして,中心ノードに書かれる内容は「単元名」となり,これは言語で表現します.例えば,大単元「もののとけ方」,「体積」もしくは小単元「直方体・立方体の体積」など自由に設定できます.教科によってどの範囲で児童に描いてもらうか先生方が決めて下さい.

 に最も重要な点ですが,上の図において「中心ノード」と「第1ノード」は教師側の提示となり,先生方の裁量が生きる部分ですつまり,これらのノードの内容は,先生方が慎重に決めて頂くことになります.そして児童(生徒)は,第2ノードから描き(書き)始めることになります.

 ではなぜ児童(生徒)は,中心ノードから描くことが出来ないのでしょうか.最も簡単なのは次のように,単元名だけを書いた中心ノードのみの提示です.

 のことについては,現職の時に何度も確認したのですが,ほぼ全員の児童が何も描けませんし,描く気持ちも低下します.これは中心ノードに書かれた言語(※この場合は「面積」)から,何を連想すればよいかがはっきりしないからだと考えられます.

 ころが,次のようなプリントならば俄然描く気持ちが出て,どんどん描いていきます.

記憶再生マップの初期提示の例

 れは以前の記事にも同様のことを書いたと思いますが,例えば「面積と三角形」のつながりから,「面積」という単元のなかの「三角形」という言語ですから「三角形の面積について何か知っていることを記述すればよい」ということに気づくという「手がかり再生法」の手法を用いています.これは,意味記憶エピソード記憶という宣言的記憶(顕在記憶)の想起法になります.

 先生方の授業を真面目に受けた児童ならば,三角形の面積の授業を思い出そうとしますが,これが脳にとってはとても重要で,その時の学習行動はどのようなものであったかを一生懸命に想起しようとします.そうすると,言語よりもむしろイメージによる内部表象が見えてくるはずです.そして記憶想起した事柄を第2ノードに絵で表現するのです.もちろん,言語で表現しても構いません.これまでの実践では,絵よりもむしろ言語で第2ノード以降を記述する児童は,その単元についてよく理解していることが多かったようです

 回は,記憶再生マップについて詳細しました.博論の展開では,この後,この実践でどのようなデータを収集してまとめるかを記述しています.このことについては,さらに次回に詳細します.長くなりましたが,いつも丁寧にお読み頂いていることに感謝申し上げます.なお,ご質問等あられれば,コメント欄を通じてお願いいたします.

 

1時間の追加で学力UP?脳科学に基づく学習法検証その①

 3月になりました.

 このブログでは,学校現場の先生方が授業を計画されるときに,どのような学習行動を組み込むと児童・生徒が学習内容を理解できるようになるかについて,主に認知科学的な視点で記述しています.

 在は,放送大学学術リポジトリで2023.12から14か月連続アクセスランキング1位を続けている私の博士論文「小学校理科教育における指導方略の研究-意味ネットワーク・モデルとその発展型を用いた知識構成-」を現場の先生方が共通に持っている経験知を例として分かり易く説明しています.

 お,現場の先生方の経験知を利用して説明を行っている関係上,教職の経験をお持ちでない方には少々分かりにくい説明になっているかも知れません.

 た博士論文は,小学校の理科を例に書いていますが,基本的には教科は関係ありませんので,それぞれの興味があられる教科で応用して頂けると幸いです.これまでの記事は博士論文目次から関係ある記事にリンクを張っていますので,ご利用頂きたいと思います.

 

 て今回は,仮説②の検証方法について説明します.

 仮説②は,2025.1.05の記事でご説明したように

「児童の知識モデルとして,意味ネットワーク・モデルの手法により,児童が自己の概念を概観できる形で表象しそれらの関係性を考える機会や他の児童に説明する機会を設けることにより,概念の再構成が可能となる.」

という事でした.

 れを別の言い方にすると,「学校教育における知識の獲得と概念化は,海馬が保持しているエピソードを記憶想起し内部表象するという積極的な概念形成によってなされ,その場合利用されるのが意味ネットワーク・モデルというマッピング手法と他者への説明活動であるということ」です.

 の仮説検証は,他の教科に比べて体験活動が多い理科の学習において行うことにしました.次の図で,雲の形は脳内にある個々の記憶を模式的に表したもので,その中の映像は学習行動のエピソードとします.小学校において理科の学習は,概ね週に2~3回程度の授業がありますので,この図は少なくとも初めの実験から1週間程度が経過した日に行われた4回目の授業中における,ある児童の脳内に見られる実験のエピソードを表していることになります.つまりどの回の実験のエピソードも,時間の経過とともに既に不鮮明になっています.それぞれのエピソードの内部表象は,他者に対しては提示できませんので「初めの実験では・・・・」や「2回目の実験の・・・・」などのように発話に適したラベルを与えて説明を行います.

 

 数回の実験を通して行われる理科の学習の例

 般的な授業では言語のみによるまとめが行われるので,エピソードの記憶想起が十分になされない可能性が残りますそして次第に,このような状態のまま記憶の鮮明さは薄れてしまい,最後には消失したり記憶の入れ替わりなどが起こることになります.

 先生方の中には,児童の記憶は1週間程度ではこんなに不鮮明にならないと思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか.このような疑問に対しては,昔は忘却曲線の話が持ち出されていましたが,つい最近の2025年2月21日理化学研究所が出した研究成果が興味深いと思います.

 

理化学研究所の研究成果(プレリリース)2025

 簡単に言えば,「記憶は時間の経過とともに無意識のうちに変わっていく」ことを理化学研究所柴田和久氏樋口洋子氏らのグループが,右側の海馬の活動を調査することによって解き明かしたという事です.彼らの研究によれば,極めて単純な実験でも正しい結果が逆の形で記憶されることもあるという事なので,授業のエピソードのような複雑な記憶では十分に考えられるのです.

 って,授業のような複雑な記憶を司る学習行動等では,むしろ児童の記憶が正しくいつまでも保持されているとは考えない方が自然であると言えます.

 余談ですが,このような人間の弱点を補う上でタブレットなどで実験の様子を撮影し保存しておくのも一考です.

 

 方で,はっきりと記憶想起がなされると内部表象は鮮明になり,それぞれの現象間の因果関係に対する精緻な思考が可能となります.この精緻な思考こそが,記憶の保持に有効であると言われています.

 

 人間が進化の過程で獲得した言語によって授業のまとめを行う事については,授業の最終形として重要であると考えています.しかし,現下の授業において,ある教科のある単元の終了時点で,どれだけの児童・生徒が言語によって学んだ学習内容を発話できるでしょうか.このことは,本当の意味での学力が身に付くということと密接に関連している内容です.

 こで,児童・生徒の学力を上げるための手立てとして,単元の学習が終了した時点で学習した内容を児童に記憶想起させ,その内容を意味ネットワークを構成しているノード・リンク構造で表すという学習課題を与えることにしました.更に作成した意味ネットワークを使って,他の児童に自身の考えを説明するという学習行動を行わせることにしました.

 この記憶想起と説明活動は,1単位時間程度を考えていましたので従来のやり方に比べて1時間の手間がかかるという事になります.

 近は指導時間の確保の問題もあり,このような追加の時間はなかなか取れないのが現状のようですが,モジュール的に考えて,朝の時間の15分や帰りの会の10分を利用するなどの工夫次第で実現可能になります.

 局,今回の理化学研究所やこれまでの脳科学の研究成果,自分自身の記憶の鮮明さについての体験を考え合わせると,このような時間を確保しないと児童・生徒の概念形成が十分にできないことは脳の特性から明らかであるようです

 ※仮説の検証方法としてはこのような表現になります.

  もう既に結果は出ていますが・・(^^;) 

 こで別の観点から,仮説の検証に大きな影響を与える問題を解決する必要があります.それは何かと言えば,一般的な意味ネットワークの問題になります.

出典「Wikipedia 意味ネットワーク」

 これを見るとリンクが矢印になっており,更に「is an」や「has」などの言語が付加されていますね.例えば「Bear」has→「Fur」は「熊は毛皮を持つ」という意味になり,「Bear」isa→「Mammal」は「熊は哺乳類である」となります.つまりリンクには向きと意味を形成する言語が付随しています.それによって,これらの関係を言語化することが可能となります.

 ころが大学生ならともかく,小学生がこのような手続きを経て,ある事柄の関係性を構築できるはずもありません.そこでこのような意味を形成するネットワークの別バージョンを考える必要があったのです.つまり,意味ネットワークと同様に意味を形成するための小学生でも作成可能なネットワーク構造です

 回は,そのようにして発案した意味ネットワークの発展型について説明します.

教師の発話が児童の誤概念を形成するメカニズムとその検証方法

 つもご覧頂き,ありがとうございます.

 てこの回は,私の博論に戻り,仮説検証の方法についてご説明いたします.

 「仮説①」「教師の発話に起因する児童の誤概念は,教師の別の発話やジェスチャーにより修正される」

 の仮説を設定した理由としては,学校現場で授業を行っていると,様々な場面で教師の発話が原因で児童の中に誤概念が形成されていることを経験上知っているからであり,その対処法についても経験上獲得したからです.

 の誤概念は,教師の発話内容が児童にとって理解できない時に,続けて発話される理解可能な教師の言語が,理解できなかった言語に対する熟考を阻害する言わば逆向抑制と呼ばれる現象が起こった場合に形成されるようです.つまり,教師としては児童が理解できると思い込んで,発話したことが原因と考えられます

 れまでの研究論文のなかで,このような教師の発話によって児童の誤概念が形成されることを取り上げたものは,以前にも書いたように自分の論文以外には確認できませんでした.(他の論文をご存知の方は教えて下さい)

 一つ例を挙げますと,次のような教師の発話で誤概念が形成されそうです.

 ある先生が,5年生の理科の時間に

「今日から,もののとけかたについて勉強します.皆はこれまで,いろんなものとけているところを見たことがあるよね.そのときどんな感じだった?」

と発話したとします.それを聞いているある児童が,次のように感じたとします.

 

 生の発話のタイミングが早ければ,児童に考える時間を与えません.ですから,いったい「もの」とは何かという思考が置き去りにされています.それで,最後にはヒューリスティクスによってアイスクリームがとけると考えたようです.ヒューリスティクスとは,直感に近い感覚で答えを推測する方法です.先生は当然ながら,食塩や砂糖などを水に溶かすということを前提に発話しています.

 のブログでも以前に紹介しましたが私の調査によると,小学校5年生の「とける」という言語の理解は,約8割が融解でした.つまり,「ろうそくがとける」「チョコレートがとける」「アイスクリームがとける」「チーズがとける」「氷がとける」をイメージしたことになります.一方で,「塩が水にとける」や「砂糖を水にとかす」などをイメージした児童は2割程度でした.理由は経験の差です.私が小学生の頃は,ジュースは粉末を水に溶かして飲んでいました.ですから「とかす」という言語に対する理解も二通り持っていました.しかし今は,ジュースは液体で購入するものですし,よほど興味を持って料理のお手伝いをしない限りは,溶解の体験はしません.しかし授業では溶解現象を学習するのですから,上の絵のようなことが容易に起こります.

 すから仮説①の検証には,「経験」から得られる理解という意味で,スキーマに関する調査についても行う必要が生じたのです.

 

 説検証の方法としては,概ね次のような手順に拠ります.

(1)教師の発話する言語によって誤概念を生じさせる.この誤概念は,児童が心象を抱きやすい名詞を用いる.

※誤概念が発生していることを確かめる.

 

(2)生じた誤概念を更なる教師の発話やジェスチャーによって修正を試みる.

※児童のスキーマにあると考えられる概念をイメージしながら発話したりジェスチャーを行う.

 

(3)(1)と(2)で児童が描いた形を比較し,概念の修正が出来ているかを判断する.

(4)なぜ誤概念が生じたのかや,教師の更なる発話やジェスチャーで概念の修正ができたどうかの判断を,児童が描いた絵によって行う.

 

 のような検証授業を通して,教師がどのようなことに留意すれば誤概念を形成させないか,また誤概念を形成させたとしても,どのような再発話によって誤概念が修正されるかの考察を行うことになります.

 

 今回はここまでとします.丁寧にお読み頂きありがとうございました.次回は仮説②の検証方法についてご説明いたします.

 

 

海馬とスキーマ:意味ある経験が学習を促す

 前回の海馬の話は,納得いただけましたでしょうか.今回は予定を変更して,もう少し海馬について考えてみます.

 回の内容を補足しますが,海馬の記事を紹介している某サイトに,「海馬は地図が好き」みたいなことが書かれていたのですが,おそらく場所細胞(Place cell)の事を紹介されたのだと思います.しかし,そのように書いてあるからと言って,授業で地図を使うと効果的であるという事ではありません.

 れまでも東京大学の池谷博士のような脳科学の研究者が,海馬について様々な機能や仕組みについて解き明かしていますが,前回の記述でも紹介したように,海馬には様々な状況に反応する細胞があり,それらがアッセンブリーとして機能することで,現在の経験を内部表象すると書かれていましたね.つまり海馬体の細胞同士は,ニューラル・ネットワークの状態で外界からの情報を処理しているのです.

 のような話は,認知科学を勉強された先生方は,「イメージ・デーモン」「特徴分析デーモン」「認知デーモン」「決定デーモン」や「おばあさん細胞」の話を思い出されるかも知れません.つまり海馬やその周辺には,様々な刺激に反応する細胞があり,細胞単体で動くのではなく,関係する細胞が連携して刺激の内容を解析していると考えるのが自然です.

 えば,目には常に膨大な量の情報が入ってきます.自動車を運転している時には,主にフロントグラスを通して道路状況,前方車両や対向車の状況,左右の風景や通行人などものすごい量の情報が時々刻々入ってくるわけです.その中で,必要な情報は取り入れられ,海馬を中心として処理されます.

 日のような雪の日には,特に路面の凍結具合を判断しているはずです.融けているか凍っているかは,脳が瞬時に判断します.おそらくは,水の状態,或いは物体の表面の状態を認知する事に特化した細胞があり,路面の光り具合で過去の経験の内部表象と比較しているはずです.そのことによって,右足の筋肉を動かして速度を落としたり,落とさなかったりをしていると考えられます.

 

 かし,その他の入力された情報は消去されていますね.例えば,左右の家並みの情報はすぐに消失しています.ですから後になっても思い出せません.記憶として残っていないのです.

 はなぜ,こんな日には路面の状況を脳(海馬)が注視するのでしょうか.それは,「路面が凍結すると,車のコントロールが困難になる」という知識があるからです.その知識と氷が融けた状態や凍っている状態の内部表象は,スキーマに保管されています.この明文化された意味記憶は,無意図的に利用されることが分かっています.無意図的とは,「意識されることなく」という意味です.ですから,意識することなく海馬の細胞と連携を取って,体の筋肉をコントロールしていると考えられます.ただ,このような事ができるというのは,学習の為せる技だと言えます.「雪道は危ない」と学習したからこそ,海馬の中の細胞が活性化したのです.

 の事から考えられる学校教育で重要なこととは,意味ある経験(※この場合は,「雪道を運転できた」)をつくり続ける事です.そしてそのためには,まずは以前の知識から成るスキーマの内容を充実させることが重要です

 回はここまでです.いつも丁寧にお読み頂き,ありがとうございます.

 

 

海馬と学習:神経科学からの教育への示唆

 回は,海馬の学術的研究成果から考えられる学習法と本研究の仮説のまとめについて説明します.

 中高における現在の学習にとって重要なことは,文科省によって制定されている学習指導要領に則った授業内容を,教諭である先生方が独自の解釈を踏まえて構成し実践することです.何も他人に言われた通りに実践する必要はありません.必ず,ご自身で学習指導要領と教科書をお読み頂き,解釈してから授業構成を考えて頂ければと思っています.

 

 て,学習指導を行う上で注目すべきは海馬です.おそらく,大学の教員養成課程では,あまり触れられていないのではないかと思いますが,海馬の機能を知れば授業について考える時に色々と便利です.

 ここでは,海馬研究の専門家である東京大学薬学部教授の池谷裕二(いけがやゆうじ)博士(薬学)の書かれている内容を参考に考えてみます.

 ちなみに池谷博士が書かかれた,「海馬の基礎知識」は「基礎」となっていますが,海馬の専門研究者に必要な内容ということですので,一般的には難しい内容となっています.

gaya.jp

 の記述で,特に小中高の先生方に関係する部分は,8.海馬機能への考察,8-1 海馬と記憶・学習です.ただしこの場合の学習は,人(或いは動物)として物事を知る・事態を把握する(記憶する)と言った広義の意味です.

 の中で特に注目すべき記述がこれです.

 ①:電気生理学的実験によって、海馬の神経細胞が環境内に置かれた何らかの刺激によって活性化されることが示された。たとえば、迷路内を走り回るラットの個々の海馬神経細胞の活動を記録すると、特定の細胞は迷路の特定の場所を走り抜けるときに活動することが分かる。これは場所細胞(Place cell)と呼ばれる海馬の細胞である。こうしたデータから、外の世界を認識する地図(cognitive map)が海馬の中に形成されているものと推測されている(O’Keefe, 1979)。

 この部分で述べられているcognitive mapとは,人や動物が空間を移動する場合,自身の周りの空間を頭の中でイメージした時に認識するマップのことです.児童・生徒が校内や通学路を自由に歩くことができるのは,過去にそれらを移動した経験のエピソードが記憶されており,どのように移動すればいいのかが分かるからです.

 ここからは私見ですが,地図そのものが内包されている訳ではなく,生物が空間を移動する場合に,主に視覚から入る画像情報を認知し,それにより再構成されたイメージが内部的な表象となって意識されているものと考えています.場所細胞という名前は,空間移動という動きが付随しますが,例えば学校内であれば児童・生徒が教室や理科室,音楽室などのそれぞれ場所に行くと活動すると考えられます.

 かつて理科を指導していた時に,児童が理科室での授業をとても楽しみにしていたのを思い出します.おそらくは,場所細胞が活性化することによる副次的に心的な好影響があったのではないかと思います.

 

 の記述です. 

 ②:『より一般的な意味では、海馬体の神経細胞は、様々に活性化されるユニットの組み合わせ、つまり「アセンブリー(assembly)」として働くことで、現在の経験を内部表象している、と考えることもできるおそらく、こうした海馬の内部表象と、大脳皮質にあるより詳細な経験情報が相互作用することによって、長期的な記憶が形成されるのだろう(Wilson and McNaughton, 1993, 1994; McHugh et al., 1996)。』

 

 この内容は,学校教育にとって非常に重要だと思います.そして,この記述こそが「理解」の中身と考えられます

 まず,海馬の神経細胞が,様々に活性化されるユニットで構成されてるという事です.また,それらが「アセンブリー」,つまり集合体として組み合わされて働いているという事です.

 そして多くの異なった機能を持つ神経細胞が,同時に働くことで内部表象つまり記憶想起できると書かれています.

 その次のアンダーライン部が更に重要で,海馬による記憶想起と,大脳皮質にあるより詳細な経験情報とは,このブログでも取り上げたスキーマであると解釈できます.そして,海馬で記憶想起されたエピソードがスキーマから得られた知識と相互作用することで,長期記憶が形成されるのだろうと書かれています.これは,このブログでも何度も言ってきた「記憶想起した内容と既存の知識との連関が重要である」という主張と符合する部分です.

 つまり授業においては,事柄の関連性を探る学習行動が必須であるという事になります.

 「相互作用することによって」とは,今まさに海馬の中で,記憶想起した内容と既存の知識との連関を意識するような何かしらの学習行動を仕組むことが,児童・生徒の理解の条件ですよと言っているのです.そうすることで,長期記憶が形成される,つまり理解が進行するという事になります.

 私は,「学習内容を理解するとは,児童(生徒)が学習内容やその過程を正しく記憶に残すことである」と博論には記述しています.

 

 の記述です.

 ③これらの電気生理学的なデータが示唆することは、海馬体の神経細胞がある特定の情報に選択的に反応するわけではなく、むしろ、行動のすべてを表す内象を一時的に記憶しておく、いわば、短期記憶バッファーとして働いていると考察されるこの内部表象が後に再生されることで、ゆっくりと大脳皮質の長期的な記憶に置き換えられていくのだろう(Eichenbaum, 2001; Haist et al., 2001)。実際、徐波睡眠(slow-wave sleep)中に海馬で、覚醒時での行動が内部再生されることはすでに示唆されている(Hoffmann and McNaughton, 2002)。

 この部分は,さらに衝撃的でした.

 海馬での内部表象,つまり授業中に記憶想起している内容(映像や音声等々)については,後で再生することが重要であり,そうすることによって大脳皮質へと送られる長期記憶に置き換わるという事が書かれています.

 これは,私が提唱している記憶再生マップの考え方と符合します.単元後に,児童・生徒一人一人がじっくりと記憶再生マップと向き合い,自己中心的言語によって内なる納得をしながら記憶想起することで,概念化が促進されることは,このブログで何度も説明してきました.

 私は,博論を書いた時には,ここまで神経科学や生理学,解剖学の論文に目を通していなかったのですが,池谷博士の書かれた「海馬の基礎知識」や論文を読んで納得させられました.

博士論文より

 のように池谷博士が書かれた海馬の基礎知識(※専門家にとっては基礎知識)をもとに,学校教育における学習行動を考えると,ここに記したような内容になります.

 だに教育現場では,「〇〇を使うと,児童がよく理解できます」とか「〇〇を積極的に使わなければなりません」とか,全くエビデンスの無い指導をされている方々がおられます.これではいつまで経っても,学校教育は変わらないと思います.

 うか,このブログを読んで真剣に考える先生方が一人でも増えることを願っています.

 お,今回は内容が難しかったかも知れません.もし,疑問を持たれたら遠慮なくコメントして頂きたいと思います.

 来の予定としましては,神経細胞の発火現象についても記述すべきでしたが,混乱する可能性もありましたので,このような表現になりました.今回も丁寧にお読み頂き感謝申し上げます.

 回は,検証の方法について紹介します.

意味ネットワークモデルによる概念再構成:児童の能動的な概念形成を促す

 回は,「仮説②」について説明します.本年もよろしくお願いいたします.

 説②「児童の知識モデルとして,意味ネットワーク・モデルの手法により,児童が自己の概念を概観できる形で表象し,それらの関係性を考える機会や他の児童に説明する機会を設けることにより,概念の再構成が可能となる.

 のように,ここでは教師の発話による誤概念の問題は解決したという想定で,話が進むことになります.ここでのポイントは,概念の再構成ということでしよう.

 

 師の発話による誤概念の形成問題が解決されると,児童は授業のエピソードや獲得した知識を記憶に留め保持することになります.これらの記憶は,海馬と呼ばれる部位で概念化されます.

 ころが,記憶は必要に迫られて初めて利用できるようになるのですが,想起する必要のない記憶やリハーサルをしない記憶は,徐々に消失します

 

 なみにリハーサルという心理学用語は簡単に言えば,何度も言語を唱えて忘れないようにすることです.

 近では,スマホの二重認証でパスワードの他に,SMSやメールを通じて送られてくる短い数字の文字列を,唱えながら入力する場合などに使うやり方もリハーサルです.絶えず繰り返し唱えないとすぐに忘れてしまう脳の部位に入力されるからです.通常は,スマホの文字列コピー機能を使ってペーストしますが・・・・.

 ころがパスワードは,唱えなくても忘れていません.それは,しっかりと概念化され記憶されているからです.つまり,そのパスワードの文字列は,他人から見れば全く意味の無い文字列ですが,あなたにとっては「意味ある」ものです.

 念化とは,自分にとって意味を持たせることですし,概念化すると意味が分かりますので説明することが可能です.例えば,「〇〇〇〇という文字列は,〇〇銀行の私の口座の暗証番号です」などです.

 では,この意味は獲得したのでしょうか.

 そうではないことはお分かり頂けると思います.

 うです,この意味は自分で与えるものなのです.

 まり,児童が学んだ記憶(エピソードや知識)を概念化させるためには,児童自身が意味を与える操作をしなければならないという事になります.そして,自分にとって重要であると判断できたエピソードや知識は,忘れてはならないのです.

 の図は,記憶想起によってなされる場面を表した図です.女の子が授業後に,記憶に残っているエピソードの場面や学習のまとめが書かれた板書を記憶想起しながら,大切だと考えているシーンです.

 のような事は,これまで文科省の指導要領には明示されていなかったので,現行の教科指導過程では,この手続きを行っていません.つまり,児童が獲得した知識は,即時的に概念化すると考えられていたと言っても過言ではありません.

 もちろん,そんな児童も確かに存在しますが少数です.

 方で,1970年代後半から2000年代前半にかけて海馬の研究が進むにつれて,授業と海馬の生理学的機能をどう結び付け,いかにして海馬を利用すればよいかなど議論がなされたことはありませんでした.

 まり現行の一過性の学習過程では,多くの記憶が学習終了後にほとんど利用されずに消え去り,それ故に概念形成できなかった児童が多かったと考えられます.つまり,45分間の学習内容を記憶想起させるような仕組みが,これまでの授業では用意されていなかったという事になります.

 は,このような現行の一過性の学習過程を消極的な概念形成と呼んでいます.

 方で,本研究での記憶想起を主要な手段として活用する概念形成過程は,学習者によって獲得した知識を,納得を伴う児童の精緻な思考過程により,既存の概念や獲得した知識とを一連の関係としてつなぎ合わせる,言わば積極的な概念形成です

 次回は,海馬の学術的研究成果から考えられる学習法と本研究の仮説のまとめについて説明します.

 今回も丁寧にお読み頂きありがとうございました.

授業における言語コミュニケーションと児童の概念形成:誤概念生成・修正メカニズムの解明に向けて

 正月の能登半島地震で始まった令和6年も,もうすぐ終わりです.

 のブログは,ほぼ10日おきに更新作業を行ってきました.今年は今回で38回目となります.いつもお読み頂き,感謝申し上げます.

 て今回の話題は,博論によればp22~28に書かれている「4. 仮説と方法」の内容です.ここでは,二つの仮説を設定しました.今回は,その内の一つについて説明いたします.

 なお,文中の「児童」は,中学校・高等学校にあっては,生徒と読み替えて下さい.

 仮説①「教師の発話に起因する児童の誤概念は,教師の別の発話やジェスチャーにより修正される.」

 私の博論は,このように「教師の発話」についての仮説を最初に取り上げました.

 それは,様々な事柄の概念が主に言語によって表象されるからです.

 また児童が正しい概念を形成するためには,児童が,授業で交わされる言語を正しく再認する必要があるからです.

 

 の図は,理科の時間に,先生が水に食塩や砂糖などを溶かす実験を行うことを前提として児童に,食塩や砂糖などの発言を期待して発話した数秒間の出来事を絵にしたものです.

 この図の例では,先生の発話する内容と児童が経験した内容やもともと持っていた関連する知識の内容は,言語で表現されています.

 このように記憶の中身については,主に言語によって表象されるのです.

 

 れは前回お示しした目的①「教師の発話による児童の誤概念の形成と修正」に関係しています.

 一般的に,これまでの教育関連の論文等で,「教師の発話」を児童の誤概念形成の原因と考えたものは極めて少なく,むしろ教師の発話は完璧であるとの前提で,様々な議論がなされていたと考えています.

 ぜなら,文科省からの様々な提言等々は,教師の発話を非とする発想がありません

 ですから,「学習の目標や教材について理解し,計画を立て,見通しを持って学習し,その過程や達成状況を評価して次につなげる能力を育成するために,個別最適な学び自己調整して進めることが大切.」などの提言も,全て学習者の行動目標的に規定してあるような表現でした.

 かし,「学習の目標や教材について理解し」について言えば,そもそも理解することが出来ない児童も存在する訳で,その原因も児童の内部的要因だけではないはずであるという議論が存在しても不思議ではありません

 しかし,そのような疑問は切り捨てられて,最近では「個別最適な学び」を実現するための方策や自身の学びをいかにして「自己調整」するかなどのトレンド的な研究内容が多いような気がしています.

 業を含める学校生活を教師と児童児童同士児童自身児童と道具等情報のやり取りと考えると,最も多くの時間になるのは,教師と児童の情報のやり取りです

 その中でも言語音が行き交う発話によるやり取りが,最も多くの時間を要するはずです

 

 前,現場の教員向けの講演会で,大学の先生が檀上に設けられた教室のセットで,数人の児童を相手に「模範授業」なるものを公開されたことがありました.

 しかし,その先生が一生懸命に授業をなさるのですが,発話される言語が児童にとって難しく,上手く行かなかったことを思い出します.

 先生は,ご自身の発話される言語が,児童にとって難しいとは認識されずに,なぜ児童は期待した言語を発話しないのか迷っておられましたが,私は分かっていたので残念な気持ちになりました.

 この例を笑い話としてスルーするのか,研究の一つの素材と考えるかが重要であると言えます.

 ここの研究が上手く行かなければ,今後AIによる教育現場での授業支援等々の問題が出た場合,AIも人間と同じ轍を踏むことになりかねないと危惧しています.

 

 の仮説は,教師の発話によって児童に誤概念が生じたとしても,教師の更なる修正のための発話ジェスチャーにより,誤概念が修正されるだろうというものです

 そらく現場の先生方は,直感的に「できそうだ」とお考えになるのではないでしょうか.

 

 後,教師の発話にフォーカスした実践研究の詳しい中身についてもご紹介いたしますので,続けてこのブログに注目して下さい.

 今回はここまでです.丁寧にお読み頂きありがとうございました.

 

 最後にお願いです.このブログの内容が,教育の現場で活躍されている先生方に有益であるとお考えになる場合,是非とも情報を共有して頂くと,私のやる気につながってきます.